ケース1
チーム一丸で取り組み、2部品を一体化・2連トランスファーにより、コスト削減・生産性アップに貢献。
クライアント:各種缶製造の日本トップメーカー
特殊な缶製品であったため、これまでは2つの部品を接合して製造していた。しかし、缶業界のコスト削減競争は激しく、現在の方法ではコスト削減に限界があった。
そこで、「2部品を一体化加工可能な成形方法を考えて欲しい」と相談を受ける。
突然の訪問
ある日、クライアントより相談を受けたプレスメーカーと共に当方に相談に来られた。
今回の課題は、難しい絞り工法。現場の課題などディスカッションをしながら、アイデアを提案していく中で徐々に信頼を得て、正式に金型&プレスシステムの企画・製造のプロジェクトが始まった。
クライアントの担当者がとても熱心な方で、彼のリーダーシップの下、業者(各種機械メーカーの担当者)、プレスメーカーと当方4・5名のチーム体制でスタートした。
まず、2部品を一体化するためには大変深い逆絞り工法が必要だった。クライアントのスタンパーと共同テストし、試行錯誤しながら特殊装置を組み込むことによって、まずは第一段階の目処をつけることができた。
プレスの前で寝泊まりしたことも
次に問題だったのが潤滑油だった。食品缶ゆえ、工業用潤滑剤は使用できない。食缶用の特殊な潤滑剤のみ極微量だけの使用が可能であり、その環境下で製造できるようにしなければならなかった。そこで、以下の4つの方策を講じた。
- 上下型に冷却水をまわし、熱によるかじり(キズがつくこと)防止対策を施した。
- 材料粉のダイへの付着によるワークへの傷、型の他部品のかじりなど続発し、困難を極めた。
夏場の半年間の悪戦苦闘、特に後半3か月間はクライアントの寮に泊り込み、時にはプレスの前にゴザをひいて寝泊りしたこともあった。その結果、型材質、クリアランス(ものどうしのスキマ)など何度も手当てし、水道水で軽く洗うだけで、飲料用使用がOKになるまでクリアすることができた。 - 材質については、影響のない範囲でやわらかい材を使用するよう変更した。
- さらに逆転の発想で、クリアランスを広くした分、型の部分的な摺動部品を中空可動の構造とした。
それと同時に、製造ラインの改善にも取り組んだ。生産量多くかつ材料特性の関係もあって、加工スピードにも限界がある。どのくらいのスピードであれば問題なく絞れるかのテストも幾度も重ねた。プレスは1台のプレスに2組のトランスファー装置をつけて、生産性を2倍にすることができた。
約5か月間、金型の設計と製作、製造、組み付けをし、その後半年間トライを重ね、やっと完成にこぎつけることができた。
全員で祝杯をあげた
難しい逆絞りの解決、潤滑剤の問題のクリア、2連トランスファーなどによる生産性のアップにより、市場価格に対応できる缶製品がやっと完成した。本ラインはプレス、トリミング、エア漏れ検査、ラベル貼り、他部材の投入、梱包まで全自動化し、最終的には全長約100mの一ラインものを造りあげた。その結果、マシンの生産性が4倍になり、製造コストも50%削減できるようになった。
完成した時は、全員の拍手が鳴り止まなかった。一升瓶でお神酒をかけて、皆で祝杯をあげた。
クライアントのリーダーシップの下、関係者が一丸となって勝ち得た成果であった。
これを契機にお互いの信頼を得て、難易度の高い技術を必要とする案件などの相談がくる程、親しい関係が続いている。